教育トレーニング
   
学生実習
 
高橋 健
大田原赤十字病院放射線科での実習に参加して
 平成17年2月28日から3月5日までの6日間、大田原赤十字病院放射線科で実習をさせて頂いた。今回実習をさせて頂く切っ掛けとなったのは、放射線科部長である水沼先生の救急放射線医学についての講義を大学で受けたことである。将来、何らかの形で救急医療に携わっていきたいと考えているので、救急医療に対し放射線科医がどのような形で携わっているのかを実際に見てみたいと思い実習させて頂くことにした。わずか6日間と短い期間であったが、放射線科のスタッフの方々や総務課の方々、食堂のコックさんにまで親切にして頂き非常に有意義に過ごせたと思う。以下実際に体験したことを感想を交えて振り返ってみたい。
2月28日(月)
 大田原赤十字病院は栃木県北部の基幹病院であり、救急医療は第3次救急まで担っている。一日の外来患者数は800~900人であり、まさに地域の医療の中心という感じがした。放射線科のスタッフは医師が3名、技師が十数名である。一日に読影する写真の数が百数十枚で、それを2人の専門医の先生が中心に、3年目のレジデントの先生を指導しながら読影している。予約の患者に対する撮影や入院患者に対する撮影、救急科からの緊急の依頼、ほかにも近隣の放射線科医がいない病院から遠隔画像システムを用いて数十枚の写真が送られてくるためにこれほどまでの量になってしまう。医師の数に比べて読影する数が多いため負担は大きいが(だが定刻までにほぼ読影が終わるのはすごい)、小児から成人まで男女問わず、頭部・胸部・腹部・四肢と全身全てを診るし、さらに肺炎などから救急外傷まで、読影する疾患が多岐にわたっており勉強するにはもってこいの環境であると思う。この日一番驚いたのが血管造影でのこと。造影中に患者さんが暴れだしてしまい、5、6人で抑えるという事態になってしまった。大動脈までカテーテルが挿入されている状態であったのでひやりとした。やはり医療というものは人間を対象にしているので何が起こるかわからないという事実を改めて教えられた気がした。
3月1日(火)
 午前中は上部消化管造影を見学させて頂いた。レジデントの先生が一人で全て行っており、若い医師にも積極的に経験を積ませている。見学後読影室に戻ると歯科医で釘のような器具を飲み込んでしまったという患者さんの写真を読影しているところであった。写真上に釘のようなものがはっきりと写し出されていた。その後内視鏡を用いて無事取り除くことができた。午後は放射線治療の外来診察を見学させていただいた。やはり癌の患者さんが多い。先生にうかがったところ外科的手術後の非常に重要な治療のひとつであるが、需要に対して供給が追いつかないとのことであった。癌は日本人の死因の第一位であり今後も増加していくであろうと思われる。放射線治療を担う医師がますます必要とされていくのではないだろうか。
3月2日(水)
 本日午前はIVR下のシャントPTAと肝臓癌に対するTAEを見学させて頂いた。TAEは救急医療で腹部外傷や骨盤出血などに対して有効な治療と聞いていたので、是非見てみたかった。実際に見学させて頂き感じたことは、IVRは非常に熟練を要するということ。一時的に造影された血管の走行を頭に浮かべながら、半ば手探りのような形で目的とする血管までカテーテルを持っていく。血管の走行も狭窄などによってまちまちであるし、動脈硬化でもろくなった部分もある。もし血管を破いてしまったりしたら患者さんの生命に関わる。患者さんにとっては侵襲が少ないとされるがそれは医師の技術があってこそであり、医師は技術を磨く努力を怠ってはいけないと感じた。
3月3日(木)
 午前中は夜中に救急に運ばれたくも膜下出血の患者に対する脳血管造影を見学させて頂いた。短時間で終わる。患者さんの負担を減らすためにも迅速な検査は重要だと思う。午後は那須南病院にカンファレンスに向かった。那須南病院や黒磯病院などは放射線科医がいないので遠隔画像システムを用いて大田原赤十字病院のほうに画像を送ってくる。送られてくる画像に対して大田原赤十字病院の方で読影をするという訳だ。カンファレンスでは、所見についての質問や新たな問題点についての議論が行われていた。地方の病院では放射線科医がいない病院が多い。そういう病院と放射線科医のいる地域の基幹病院が連携をとることは地域の医療レベルを上げることになると思うし、恩恵は患者さんに必ずもたらされると思う。設備を整えるために行政は積極的に働きかけるべきだと思う。一日の実習も終わりかけたころに救急で交通外傷の患者さんが運ばれてきた。大田原赤十字病院は救急室の隣に、救急用のCTと単純X線の撮影ができる部屋があり、救急からの依頼があるとすぐに撮影できるようになっている。今回も依頼から撮影まで非常にスムーズで、読影室にも写真がすぐに来た。救急においては読影する能力だけでなく患者が運び込まれてから、いかに迅速に写真を作ることができるかということも重要であると思う。設備のみならず技師の方々の貢献によるところも大きい。救急医療は病院としての総合力が問われるのだと実感した。
3月4日(金)
 本日は専門医の一人が東京で行われるシャント形成に関しての講習会に参加されることになり、専門医が一人という状況であったので非常に忙しそうにしていた。手技を見学することは無かったが、読影室でCTなどの読み方を教えて頂いた。年齢や性別によって写し出される像を異常とするかどうか考えなければいけないことや、ポイントとなることなど色々教えて頂いた。また空いた時間はteaching fileを見せて頂いた。大田原赤十字病院では、珍しい症例や救急外傷に関してレポートや写真をteaching fileとして、部位別・疾患別に保管してある。量がとても多く様々な症例が含まれているので、若い医師にとっては非常によい教材になるのではないだろうか。
3月5日(土)
 最終日。昨日から雪が降り積もり、交通事故などで救急外傷患者が増えるのかなと考えつつ実習を始める。幸いなことに大きな事故もなく外傷患者が運び込まれることは無かった。午前中は血管狭窄部位を広げる手技と脳動脈瘤クリップ後の血管造影を見学させて頂いた。血流が改善されるとスリルを触れることができた。教科書でスリルと書いてあってもどのようなものかいまいち実感が湧かなかったが、実際に触れてみると震えているのがわかり、なるほどこういうものかと感動した。最終日ということで昼食に近くの蕎麦屋でご馳走になり、6日間の実習を終えた。
 今回の実習では残念ながら一番興味があった救急外傷に対するIVR下の血管塞栓術をみることはできなかった(そのほうが良い事ではある)。だが他の塞栓術を見学することができたし、色々な手技を見学させて頂くことができた。また、救急の現場において画像所見をいかに正確に読み取ることが大切かということも知ることができた。そして何よりも放射線科の面白さを実感することができた。短い期間ではあったがこのように充実した時間を過ごすことができたのは、放射線科の方々が非常に親切にして下さったことが大きい。忙しい仕事にもかかわらず色々なことを教えて下さり、とても勉強になった。
 最後になりましたが、今回このような貴重な経験の場を与えて下さいました、慈恵医大放射線科教授の福田国彦先生、大田原赤十字病院放射線科部長の水沼仁孝先生、放射線科のスタッフの方々、病院関係者に対して心からお礼申し上げます。
2005年3月
東京慈恵会医科大学 医学科4年  高橋 健


 
救急放射線実地研修プログラム
 
安部 久志
救急放射線フェローシップに参加して
 去る、平成15年 6 月30日から 7 月 5 日にかけて、栃木県大田原市にある大田原日本赤十字病院放射線科において救急放射線フェローシップに参加する機会を得た。今回の企画の主旨は、救急の現場における放射線科医のあり方だけでなく、救急時に必要となる General Radiologist のあり方も研修するのが目的とのことであった。このような企画は今回が初めてとのことであり、今後、参加を希望される方の参考になれば、との意味も込め、私見も交えて簡単に感想を記したい。

【 大田原赤十字病院の正面像 】
 大田原赤十字病院は栃木県北部にあり、東北新幹線の那須塩原駅から車で15分の大田原市内に位置している。病床数は556床で県北部の基幹病院である。放射線科のスタッフは、見た目の迫力満点な水沼部長以下4名で、時間外は on call 体制をしいて緊急のCT、IVR検査に対応している。そのため、水沼部長以下4名とも病院から5分もかからない場所に住居を構えていた。私がいた一週間の緊急IVR検査は、通常よりも症例は少なかったそうだが、膿瘍ドレナージ 2 件、重症急性膵炎に対する動注 1 件、クモ膜下出血の脳アンギオ 1 件の計 4 件であった。いずれも救急部でCTが撮像されてから約 1 時間でIVRが開始されるという驚くほど迅速な対応であった。これは、水沼先生の普段からのパラメディカルを含めた教育と他科への積極的な働きかけ、そして他科からの放射線科への厚い信頼のおかげであると感じた。救急搬送された症例の多くは teaching file として保存されている。私はすべての teaching file を見ることは出来なかったが、見ることが出来た範囲では典型例が多かったように思う。しかし、次回以降参加される方にぜひお勧めしたい宝の山だと思う。

【 放射線科のスタッフ。中央が筆者。筆者の右側が水沼部長 】
 今回は、初回ということで、フェローシップとしてのシステムは未完成との印象をもったが、今後のより良いフェローシップ作成のためにもこれらの teaching file を半強制的にでも、参加者に見せた方が良いのではないかと思う。フェローシップのシステムついでに、もう一つ気付いた点がある。それは、参加者がどこまで実際の臨床に参加して良いのか、例えば、実際にIVRの手技を行っても良いのか、あるいは、一切医療行為を行ってはいけないのか、という明確な基準が存在していないという点である。もし「手技に参加しても良い」という一文があれば、参加者はより積極的に行動でき、より実りの多いプログラムになるに違いないと確信している。

【 遠隔診断に必要な機器類 】
 さて、大田原赤十字病院放射線科の特徴の一つである遠隔画像診断についても触れなければならない。大田原市の近隣には放射線科医が直接現地に行って臨床業務に携わることができない病院が点在しており、そのような病院から転送されたCT、MRIを一日あたり20~30件程度読影している。また、毎週一回、現地の病院でのカンファレンスに参加することで、お互いの意思疎通を図り問題点の解決を図っていた。
 救急の現場では医者側の専門に関係なく患者さんは運ばれて来るため総合的な知識が要求されるが、これは放射線科医も同様である。特に大田原赤十字病院のように放射線科が救急部と密接な関係にある病院では、画像の知識だけではなく、最適な画像検査の選択、IVRの適応など診断から治療への最短距離を走るための知識も要求される。つまり、内科や外科など他科の知識も当然必要になり、高いレベルでの“ General Radiologist ”であることが要求される。このことが、ひいては “ Doctor's Doctor ” としての存在を確立し、大田原赤十字病院におけるように、病院内での放射線科の地位向上につながる。大学病院は主に専門家養成機関であり、 “ General Radiologist ” はさほど必要とはされないかもしれない。しかし、多くの放射線科医は人数の限られた一般病院で仕事をしておりお互いにカバーし合わなければならないので、一通り何でもこなせる “ General Radiologist ” の需要は高い。ただし、 “ General Radiologist ” といえば聞こえは良いがその分布範囲は広く、すべての分野を極めて高いレベルでこなすのも “ General Radiologist ” であるし、すべての分野を中途半端にこなすのも “ General Radiologist ” である。すべての分野を高いレベルでこなすには膨大な量の知識が必要とされ厳しい道程ではあるが、難しいからこそ楽しいものであると思う。久々にその General Radiology の楽しさを思い出させてくれた一週間であった。
 最後に、このような機会を与えて下さった専門医会会長 中島康雄先生、ならびに救急放射線研究会の水沼仁孝先生、早川克己先生に深謝いたします。
大阪大学大学院医学系研究科 医用制御工学  安部 久志


 
瀬尾 麗子
救急放射線医学実地研修フェローシップに参加して
 5 月10日から 1 週間、栃木県大田原赤十字病院で救急放射線医学実地研修フェローシップに参加させて頂きました。今回は実際の研修の内容について、感じたことを交えつつ振り返ってみたいと思います。
5月9日(日)雨
 18時過ぎ、那須塩原駅に着く。日が暮れ雨も降り、香川と比べると寒い。卒後 3 年間の研修は大学病院のみで、自分の勉強不足もあり放射線科医としての経験は非常に心もとない。生まれも育ちも香川で讃岐弁しか話せないし、失語症になりそう…。
5月10日(月)曇り
 朝、早速、週末の時間外CT検査の画像を確認する。1 症例目は急性腹症の患者で大腸癌によるイレウスであった。放射線科医は水沼先生以下4名で、時間外の胸腹部CTはオンコールで読影の対応をしており、翌朝、再度写真を確認しレポートを出している。レポートのプリンターは読影室と救急外来にもあり、救急医にすぐにレポートが届くようになっている。
 読影室に緊急CTの依頼があった。急性膵炎疑いの患者。CTを撮影すると動注の適応があったため、主治医に連絡しお昼にはカテーテルが挿入されていた。どの病院でも行われる事ではあるが、依頼を受けてからカテーテルが留置されるまでの流れがとてもスムーズだった。読影室の電話を受ける際ハンズフリーにしてその場にいる人間に同じ情報が伝わるようにする。「読影室に未読影のフィルムが山積みされている」というような事はないため、すぐに読影できる。院内の医師はPHSを持っているためすぐに主治医に連絡できる。午後の通常の血管撮影が始まる前にカテーテル留置を終了する。このような対応ができるのは救急疾患に迅速に対応する体制や意識、技師、看護師の協力が全て整っているからこそだと感じた。

【 1階にあるCTと単純撮影は同室に設置されている 】
5月11日(火)曇り
 1時、緊急CTで呼ばれる。救急外来には救急処置室と廊下を挟んでCTと単純撮影装置が設置されている。CTと単純撮影は同じ部屋になっており、夜間、人手が足りないときでも処置と検査がスムーズに進むようになっている。今回は交通外傷が続けて2例。大きな異常はなく、3時30分帰る。オンコールでの呼び出しはほぼ2日に1回ほどのようだ。
 午前中は透視検査を見学。0才児のVCGも行っている。これも general ragiologist への道程か…。私は小児の検査はほとんど経験がないのに。
 医局会に行って19時には終了。さすがに眠いのでさっさと寝た。
5月12日(水)晴れ
 読影の合間にティーチングファイルを貸して頂いて勉強をする。「ティーチングファイル部屋」とも言える部屋があり、救急疾患をはじめとして様々な症例が数えきれないほど整理されており、さらに 4月からの症例はデジタル化されている。
5月13日(木)曇り
 午前中に膿瘍ドレナージと腹水ドレナージを2症例済ませる。午後は那須南病院へカンファレンスに行く。大田原赤十字病院は県北部の中核病院として、近隣の病院から送られてきたCT、MRIの読影を 1 日20~30件ほど担当している。週に1回、フィルムカンファレンスを行い情報を交換している。午前中にドレナージした症例も那須南病院から搬送された症例であった。那須南病院までは少し距離があるため、ちょっとしたドライブ気分。景色が非常にきれいで大喜び。
 夜は明治記念館での東京アンギオ・IVR会に参加する。会場は美しく、食事はおいしく、参加者は多く、こんな会が毎月開けるなんてやっぱり東京よね。
5月14日(金)晴れ
 CTアンギオやBRTOなどの手技を見学。ティーチングファイルの復習をする。それにしても、この病院の食堂の食事はうどんも含めとてもおいしい。

【 大田原赤十字病院は北海道にあります!?(訂正:栃木県) 】
5月15日(土)晴れ
 1時半、緊急CTで呼ばれる。交通外傷が2例。肋骨骨折と肺挫傷を認めたが、軽度であり3時には帰る。
 今日で研修は終了。夜は18時ごろから那須IVR研究会に参加する。参加者は20名ほどで、15症例ほどを検討していく。カンファレンス形式で現在問題となっている症例を相談したり、経過を報告したりしている。通常より参加者が少なかったとの事だが、非常に活発に意見が交わされ21時半ごろまで続く。その後反省会。こんなに早く終わったのは初めてだとか。もっと距離が近ければ毎回参加したいと思う程、勉強になった。
5月16日(日)雨
 8 時40分、羽田に向かうモノレールの中で携帯電話がなった。大学から骨盤損傷で緊急TAEの連絡だった。全く間に合わないんですけど…、救急放射線の神様が降りてきた!?
 最近、病院内での放射線科医の立場とは一体どういうものなのか、自分は放射線科医として今後どうしていけばいいのかわからなくなっていました。この研修は1週間という短い期間であるため実際の手技を習得できるわけではありません。しかし、毎朝各科とフィルムカンファレンスを行ったり、夜間に行われたCTを始業前に再確認したり、不明な点はすぐ主治医に確認の連絡をしたり、救急に対応できる体制作りなど具体的にどのようにしていけば診療に切り込んでいけるのか、また、放射線科医として積極的にかかわって行く姿勢や考え方を学ぶことができました。私の放射線科医としての今後を考え直すきっかけになったし、漫然と過ごしがちになっていた日常に新たな気持ちで取り組めるようになりました。本当に参加できてよかったと思います。
 最後に、この様な機会を与えてくださった専門医会会長 中島康雄先生、大田原赤十字病院 水沼仁孝先生はじめお世話になった放射線科の皆様に心よりお礼申し上げます。
香川大学医学部放射線科  瀬尾 麗子


 
坂本 憲昭
救急放射線医学実地研修フェローシップに参加して
 10月24日から 1 週間,栃木県大田原赤十字病院で救急放射線医学実地研修フェローシップに参加させて頂きました。
 参加志望理由は,将来的にはIVRを中心として救急放射線医学の分野でも貢献できる医師になりたいと考えていること,学会やセミナーを通じて水沼先生が提唱されていらっしゃる放射線科のあり方についてのお考えに感銘をうけたこと,症例が豊富でかつ救急放射線医学での最先端の診療が行われている大田原赤十字病院放射線科の見学ができることの 3 点です。
 今回のフェローシップを通じて,救急放射線医学に対する心構えや知識,救急対応システムのあり方など,期待をはるかにこえて様々な事柄を学ぶことができました。
 今回は実際の研修の内容について,簡単ですがご報告いたします。
10月23日(日)
 22時頃,1 週間の宿泊先であるホテル“かめだや”に到着。水沼先生からもお電話を頂き,無事到着をご報告する。
10月24日(月)
 朝,7 時40分ホテル玄関前までレジデントの菅原先生に迎えにきて頂く。午前 7 時50分大田原赤十字病院に到着。
 8 時,読影室に案内された際には,すでに水沼先生以下 4 名の放射線科医で,週末時間外に施行された画像検査および緊急IVR(異物除去術)の写真を確認されている。
 8 時15分からは放射線科カンファレンスに参加。
 8 時半より水沼先生に24時間対応の画像診断ユニットを中心として,院内を案内して頂く。
 64列MDCTでは救急用プロトコールとして,胸痛,腹痛,外傷などのパターンが作成され運営されている。なお静脈確保は,MRIも含めて看護師 2 名が放射線科処置室で行っており,注入時の点滴の確認は技師さんが行っている。
 全身用MRIはDWIBSを含めて撮像可能。頭部は基本的にはMRIを先行で撮像する取り決めがあり,年内にはMRIについても24時間の運営が開始されるとのこと。
 フラットパネルディテクタ一救急用一般撮影装置は救急部と廊下をはさんで隣に設置されており,仰臥位もしくは坐位のままで 2 方向からの撮像が可能である。
 さて,午前中のMRIでくも膜下出血の診断がなされたために,水沼先生がすぐにPHSで主治医に連絡。ただちに脳血管造影が開始となる。
 午後には同様にして膿瘍ドレナージ,PTGBDと初日にして計 3 件の緊急IVRをこの日に見学する。
 以前の参加者からも報告されているように,画像検査施行から診断確定,IVR開始までの一連の動きは迅速である。救急疾患に対応する連絡体制や役割分担が整っていることによるのだが,これらは水沼先生をはじめとする放射線科スタッフのこれまでの治療実績および,院内教育や他科への積極的な働きかけといったたゆまぬ努力によって築き上げられたものと思われた。
10月25日(火)
 午前中は注腸造影とリザーバーを用いた肝動注化学療法の薬剤注入を見学する。
 午後からは緊急脳血管撮影(くも膜下出血),および膿瘍ドレナージを見学。
 4 時半からは外科カンファレンスに参加。
 合間に読影についても見学する。1日の読影件数は百数十におよび,それを2人の専門医の先生がレジデントの先生達を指導しつつ,常時2名以上で一緒に読影されている。Dr. Net社の所見システムが採用されており,再構成画像の作成が読影者にも必要な際にはAquarius Netも利用するというスタイル。いずれのシステムも反応がよく,単純写真を含めて画像が鮮明であり,動作環境として大変に使いやすい印象を受けた。またモニターの位置等にも工夫がみられ,長時間の作業でも疲れが蓄積しにくい環境作りがなされていたが,これらは様々な試行錯誤の末にたどり着いた姿とのことである。

【 大田原赤十字病院放射線科の読影モニター 】
横並びのおおきな画像用モニター2面とテキスト用の小さめのモニターが下段中央の1面より構成されている。
報告書作成は3名のトランスクライバーによって行わるため,画像用モニターから目をはなすことなく,次々と所見がマイクに吹き込まれていく。
視線とマウスを動かす距離は短く,また,目の高さより下にモニターが並ぶため,疲れにくい。
件数は多く読影業務は多忙をきわめるものの,時間としてはほぼ定刻通りに終了されていた。

10月26日(水)
 8 時50分より緊急脳血管撮影(くも膜下出血)。
 10時30分CTHA,CTAP(予定検査)。
 13時30分TAE(予定手術)。
 14時50分緊急腎瘻造設。
 フィルムレスの環境なので,IVRの際には血管造影室のモニターの 1 面に,CT画像を表示して行われている。
 夕方は読影の合間にティーチングファイルを勉強する。「ティーチングファイル部屋」があって,救急疾患をはじめとして様々な症例が蓄積されており,さらに最近の症例はデジタル化されている。
10月27日(木)
 8 時30分から小児科カンファレンス。レジデントの先生が,次から次へと小児の画像所見を述べていき,ときおり水沼先生から解説が入るという進行。
 レジデントの先生方は小児科領域のみならず,頭部・胸部・マンモグラフィ・腹部・四肢等の単純写真・CT・MRI,さらには乳線や頸部を含めたUSについてもきっちり読影されていて,学年が上である私としてはこれまでの怠慢と勉強不足を痛感させられた 1 週間でもあった。今後の励みとしたい。
 午後は水沼先生と二人で,遠隔画像診断を大田原赤十字病院に依頼している病院の一つである,那須南病院でのカンファレンスに向かう。大田原赤十字病院は県北部の中核病院として,近隣の病院から送られてきたCT,MRIの読影を 1 日20~30件ほど担当しているとのこと。那須南病院までの道すがら,栃木県の絶景を水沼先生が紹介してくださる。
 夕方は再び読影の見学およびteaching fileで学習。
10月28日(金)
 8 時30分から産婦人科カンファレンス。
 8 時50分からCTHA,CTAP(予定検査)。
 13時から緊急PTCD。
 夕方,消化管穿孔による後腹膜および縦隔・頸部気腫の患者様が運び込まれ,CTガイド下でのドレナージ術および減張切開術が施行される。
10月29日(土)
 朝 8 時30分 昨日の消化管穿孔の患者様の緊急CT。幸い気腫の量は著明に減少していた。
 同時刻,血管造影室では緊急脳血管撮影が開始されている。この週は急に寒くなったためか,いつもよりくも膜下出血をはじめ緊急IVRの適応となる患者様が多かったようである。
 9 時35分から胆道ステント留置術(準緊急)。
 10時25分から肺癌再発・気胸・縦隔気腫の患者様に対して,トロッカー留置と減張切開が施行される。
 午後からはみんなで宇都宮に移動して第20回記念の那須IVR研究会に参加。今回は記念研究会のため,坂本・水沼両先生の司会で,早川克己先生をはじめ京滋IVRから招かれた講師陣のご講演を拝聴する。IVRにまつわる工夫や注意点について,まさに目からうろこのお話を伺い,大変に有意義な時間であった。その後,坂本・早川両先生を交えて別室で症例検討会が開かれ,活発に意見が交わされる。この日で有意義であった研修はすべて終了。
 1 週間を通じて学べたことは,放射線科医は老若男女に関わらず全身の疾患に対する診断技術と治療技術をもちうるということ,そして救急医学の分野において果たすべき役割がいかに大きいかという 2 点であった。また画像検査情報は“生もの”であり,とくに救急医療においてはいかにリアルタイムで主治医に伝えるかが重要であることも痛感した。その実現のため,大田原日赤病院では,フィルムレス化,オンコールシステムといった体制の確立のみならず,読影業務の効率化も含めて,まさに最先端というべき取り組みがなされていた。「目の前の患者さんに自分は何ができるのかを考えなさい」とは水沼先生から初日にうかがったお言葉だが,まさにその言葉の実践を目の当たりにさせて頂いた 1 週間だったと感じている。本当に参加できてよかったです。
 最後になりましたが,このような貴重な機会を与えて下さった専門医会 中島康雄先生,坂本力先生,早川克己先生,忙しい仕事にもかかわらず熱心に教えて下さり,また親切にして頂いた大田原日本赤十字病院の水沼仁孝先生および放射線科スタッフの先生方,放射線診療技師,看護師,トランスクライバー,ほか病院関係の皆様に対して心からお礼申し上げます。今後もこのすばらしい企画に多くの放射線科医が参加されることを願ってやみません。

大田原赤十字病院は東北新幹線の那須塩原駅から車で15分の大田原市内に位置している。大田原赤十字病院は栃木県北部の基幹病院で,1日の外来患者数は800~900人,救急医療は第3次救急まで担っている。放射線科のスタッフは,水沼部長以下4名で,時間外はon call体制をしいて緊急のCT,IVR検査に対応している。

兵庫県立淡路病院放射線科 坂本憲昭



 
西川 浩子
救急放射線研修に参加して
 11 月13 日から1 週間,栃木県大田原赤十字病院で救急放射線医学実地研修フェローシップに参加させて頂きました。
 放射線科診断医として救急医療にいかに参与しうるのか,現職場を離れて経験してみたかったのが志望理由です。
 過去の研修参加者の報告と重複する点も多いかと思いますが,私なりの感想を報告させて頂きます。
放射線科のシステム
 大田原赤十字病院放射線科には,64 列MDCT,1.5TMRI,フラットパネルディテクタ一救急用一般撮影装置が,救急部と廊下を挟んだ向かいに近接して配置されており,救急部からスムーズに患者移動ができるよう設計されていました。ここ最近で更新された機器が多数あり,これまでの経験に基づいた動線のスムーズな配置がなされていました。
 造影時の静脈確保は,CT,MRI の検査室の間でほぼ全例看護師によって確保されていました。救急部でもあらかじめ耐圧チューブでルート確保がなされるとのこと。さすがに徹底されていました。
 画像で印象的だったのは,やはりCT の外傷パンスキャンです。頭部から骨盤部まで,骨盤や下肢の骨折があればさらに範囲をのばして全身スキャンが行われていました。研修中にも2 回車にはねられた患児のCT 撮影があり,即座に大腿骨の骨折部を含めてのスキャンがなされていました。当然造影も行われ,腹腔臓器損傷も含めた多発外傷に大変有用な撮影方法でした。
 日勤帯の緊急の画像検査依頼は,ほぼすべて放射線科医を通して行われていました。読影室にかかってくる電話はスピーカーで受け,そこにいる全員が依頼内容を共有されていました。CT ひとつにしてもすべて放射線科医を通すのは,他科の主治医にしてみれば面倒と思われているかもしれませんが,それを徹底させるために放射線科医がいかに努力をされているか,わかってほしいものです。ともあれ,そうして緊急検査は全員の知るところとなり,画像があがり次第即読影が行われ主治医に読影済みの連絡がなされていました。こうしたシステムを徹底できるのは病院の規模にもより,大田原赤十字病院クラスの規模がぎりぎりだろうと先生方が判断されているように感じました。確かに現状の大学病院クラスでは,降るような緊急検査依頼の中に重症例がまぎれこんでいるため,口惜しい思いをすることがままあります。
 救急とは離れますが,大田原赤十字病院では読影はほとんどの症例が上級医とレジデントの2 人以上で行われています。同時に画像をみて所見を述べあい,結論をレジデントがレポートとして入力します。研修医やレジデントが1 人で画像を眺めて時間をかけてレポート作成するのも勉強になるとは思うのですが,短時間で的確な読影を行えるようになるこのシステムは放射線科医の教育体制として完成されたものだと思いました。
IVR
 さて,今回の研修期間中は夜間の救急呼び出しは全くなく,ある意味‘はずれ’の1週間だったようです(前の週はそれなりに充実していたとのことです)。
 1 週間を通して緊急IVR は1 件のみで,上部消化管穿孔によると思われる腹膜炎症例の腹腔ドレナージを見学しました。消化管穿孔といえば開腹,というイメージがあったので貴重な経験でした。
 予定のIVR は,透析患者のシャントPTA,膵癌術前マッピング,IVH リザーバー留置,胸水ドレナージの4件でした。いずれもレジデントの菅原先生がさらっとこなされ(水沼先生のあたたかいご指導もありつつ),学年ばかり上の自分の経験不足を痛感しました。
 IVR の症例数が思っていたより少なかったことがちょっと残念でしたが,ここ最近で内科医が相当人数引き上げにあったとのことで,症例自体が減っているかもしれないというお話でした。ただ,緊急IVR に持ちこめそうでできなかった症例は他にもありました。
 1 件はぎりぎり血栓溶解に持ち込めそうな症例でしたが,主治医がふみきれず行えませんでした。もう1 件は,他院にて発生の喀血症例で準緊急的にBAE になりそうでしたが,病院間の連絡がうまくいかなかったのか,別の病院に搬送されたようです。
 放射線科としていつでも緊急IVR 可能という態勢を示しているのにもかかわらず,緊急IVR に持ちこめない。人手不足や労働量の過剰による主治医のモチベーションの低下や,病院間の連携の難しさなど,放射線科だけではどうにもならない事情があることを痛感しました(もちろん主治医のご判断もあるかと思いますが,今回は感じたままを書かせていただきました)。
ティーチングファイル
 過去に研修に参加された先生方が報告されている通り,救急症例のティーチングファイルが非常に充実していました。最近の症例はすべてデジタル化されており,ビューアーでの閲覧が可能でした。一般読影に参加させて頂くかたわら閲覧しましたが,めずらしい症例から典型的な所見を呈した症例まで多岐にわたっていました。フィルムで保管されている症例も本当に山のようにあり,すべてに目を通すのはとても不可能でした。それらがデジタル化されることをかげながら願っております。
那須IVR研究会
 最終日18 日におこわなれた那須IVR 研究会は,夕方6 時から延々9 時過ぎまで続く充実したものでした。6 ~ 7 施設から約15 症例が供覧され,所違えばIVR の事情も違うわけで,大変新鮮な印象を受けました。詳しい内容はいずれ那須IVR 研究会のHPにアップされるようですので,是非ご覧ください。症例検討終了後も,日付が変わるまで参加された先生方とお話をする機会があり,よい経験になりました。
研修に参加して
 今回研修に参加して改めて考えたのは,放射線科が病院の中でどのように存在するべきか,ということです。大田原赤十字病院では,撮影後ほぼ即時読影することで,遅滞なく主治医にコンサルトすることが可能となり,実際の治療に深く関係されていました。レポート上に記載するばかりでなく,直接主治医に連絡を取り,放射線科としてやれることを提案していくこと。とてもシンプルなことであり,もちろん実践されている先生方が全国にはたくさんいらっしゃると思うのですが,全領域にわたり放射線科医全員が実践できていることがすばらしいと思いました。それは各先生方の日々の経験による自信とたゆまぬ努力があってこそのことで,今後自分自身がどんな放射線科医になりたいのか,考え直すいいきっかけになりました。
 これからもこの救急放射線研修にたくさんの先生方が参加され,様々なことを感じ学んでいかれることを願ってやみません。専門医試験取得前の先生方はもちろんのこと,専門医取得後のある程度経験を積まれた先生方にも得難い経験になると思います。
 最後になりましたが,今回このような機会を与えてくださった専門医会会長の中島康雄先生,大田原赤十字病院放射線科部長の水沼仁孝先生に深謝いたします。また研修期間中,何かとお世話になった加藤先生,菅沼先生,杉山先生,スタッフの皆様,本当にありがとうございました。
名古屋市立大学医学部 放射線科
(医療法人済衆館 済衆館病院 放射線科勤務)
 西川浩子